建築を超えた、ライトの「座る哲学」に出逢う旅。
2025.12.18
建築の巨匠が「椅子」に込めた野心。フランク・ロイド・ライト展、開催は2026年1月25日まで。

近代建築の三大巨匠の一人、フランク・ロイド・ライト。彼の名は、落水荘やグッゲンハイム美術館といった象徴的な建築物とともに記憶されています。しかし、彼が手がけた200種類を超える「椅子」のデザインが、建築と同様に革新的で、時には建築ビジョンを先導する実験場であったことは、これまで十分に語られてきませんでした。
2025年10月4日より、ウィスコンシン美術館(MOWA)にて開催される「Frank Lloyd Wright: Modern Chair Design」は、この「家具は建築の附属品である」という固定観念を覆す、先駆的な展覧会です。
画像:MOMA
建築の延長ではなく、独立した「生きたデザイン」
本展の最大の見どころは、タリアセン研究所の建築史家エリック・ヴォーゲル氏の最新研究に基づく、初公開作品を含む40点以上の家具コレクションです。 ヴォーゲル氏は、ライトが自身のスタジオ兼自宅である「タリアセン」を再建する際、クライアントに拒絶された斬新すぎる家具のアイデアを、自らの空間で実験的に具現化していた事実を突き止めました。つまり、椅子は単なる調度品ではなく、ライトの哲学を最も純粋に反映した「創造のインキュベーター(孵化器)」だったのです。

画像:展示会の様子
見逃せない再現展示と貴重な資料
展示では、ライトの曾孫であるS・ロイド・ナトフ氏ら著名な木工職人とのコラボレーションにより、未完成のまま失われていたデザインなどを忠実に再現。特に、グッゲンハイム美術館のカフェのためにデザインされた椅子の初製作・展示は、デザイン史における重要な瞬間となるでしょう。 また、1911年から1959年までの5つの時代を辿る構成となっており、スケッチやアニメーション、アーカイブ写真を通じて、ライトのデザインプロセスを多角的に体験できます。
開催概要
本展は、ライトの故郷であるウィスコンシン州から、アメリカン・モダニズムの新たな側面を世界に問いかけます。建築界の巨匠が、椅子という身近なオブジェクトを通してどのような未来を夢見たのか。その全貌が明らかになります。
- 会期: 2025年10月4日 ~ 2026年1月25日
- 会場: ウィスコンシン美術館(MOWA)
- 主な展示内容: 家庭用家具40点以上、未発表作品の再現、作業スケッチ、アーカイブ資料など
- モダン・チェア・デザイン展ページ https://wisconsinart.org/exhibitions/frank-lloyd-wright/